現在、日本は4人に1人が高齢者という社会です。今後も高齢者は増えるのは明らかです。

 

確定申告は退職した人や年金で暮らしている人でも関係する場合があります。

そこで、本記事では退職後や年金生活を送っている方向けに内容をまとめました。

 

【確定申告やり方①】会社を辞めて退職金をもらった場合

 

 

最近は、会社を辞めて退職金をもらったという方も珍しくなくなってきています。

実は、退職前に退職所得の申告書を提出していなければ申告が必要になるケースがあります。

 

確定申告をすれば還付の可能性大!

 

会社を退職して退職金を受け取る場合、通常は退職する前に勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出します。

この申告書を提出していれば、原則として確定申告の必要はありません。

しかし、提出していない場合は、確定申告を行えば還付金を受けられる可能性があります。

 

退職金は、給与などと同じ場所として扱うと、一時的に高額の収入を得ることになり、所得税率が高くなってしまいます。

その為、一般の所得と分けて税金を計算する「分離課税方式」が取られています。

 

 

また、退職所得は以下の図のように、勤続年数が長いほど控除額が大きくなりますが、

前述の「退職所得の受給に関する申告書」を提出していないと、一律に20.42%もの所得税を源泉徴収されてしまいます。

申告書を提出していない場合は、確定申告をする事で還付を受ける事ができます。

 

確定申告をした方が得になるケースもある!

 

「退職所得の受給に関する申告書」を提出していても、退職した年の収入が少ない場合は、

扶養控除や配偶者控除、生命保険料控除、基礎控除などの各種所得控除が控除しきれていない事があります。

また、当然のことながら、退職後に自分で支払った社会保険料は控除されていません。

 

このような場合、確定申告をする事により、控除しきれていなかった所得控除を退職所得から控除でき、

税金の還付をうけられる可能性があります。

申告書を提出せずに再就職をした場合、給与所得については再就職先に前職の源泉徴収票を提出すれば、

年末調整を行ってもらえますが、退職所得については自分で確定申告を行わななくてはあんりません。

 

 

その為、再就職先からもらう給与の源泉徴収票を確認すると良いでしょう。

もし、源泉徴収税額が0円になっていたら、基礎控除が控除しきれていないので、

確定申告により退職所得から控除を受ける事ができます。

 

分離課税方式では第三表を使用

 

退職金の確定申告は、分離課税方式を取っている為、申告書Bと分離課税用の第三表を使用します。

第三表では、下の図のSTEP1の計算式で出した金額を「所得金額」の「退職」欄に記入します。

 

例えば、10年間勤務し、退職金200万円を受け取った場合、退職所得の控除額は400万円になり、

すでに退職金の額を上回っています。このような場合の退職所得は0円です。

もし退職所得の受給に関する申告書を提出していない場合、20.42%の源泉徴収がされていますから、

還付金を受け取る可能性は大でしょう。

 

第一表の「所得から差し引かれる金額」の「社会保険料控除」欄には、源泉徴収票の社会保険料の他に、

退職後に自分で納めた国民健康保険料(介護保険料含む)や国民年金などがあれば記入します。

全額が控除の対象となります。

 

【確定申告の必要の有無】

「退職所得の受給に関する申告書」の提出の有無 確定申告の必要の有無 退職した年の年収が多い?少ない?  
提出した 不要 多い 税金が戻ってくる可能性が低い
提出した 不要 少ない 税金が戻ってくる可能性が高い
未提出 必要    

 

【退職所得の税金の計算方法】

✅STEP1
(支払金額-退職所得控除額)×1/2=課税退職所得金額

◎退職所得控除額の計算方法

勤続年数 退職所得控除額
2年以下 80万円
3~20年 40万×勤続年数
21年以上 70万×勤続年数-600万円

※1年未満の端数は、1年とする。

 

✅STEP2
課税退職所得金額×税率-控除額=税額

◎所得税の速算表

課税退職所得金額
(遷延未満切り捨て)
税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超~330万円以下 10% 9万7,500円
330万円超~695万円以下 20% 42万7,500円
695万円超~900万円以下 23% 63万円6,000円
900万円超~1,800万円以下 33% 153万円6,000円
1,800万円超~4,000万円以下 40% 279万円6,000円
4,000万円超 45% 479万円6,000円

※別途、上記で計算した金額の2.1%の復興特別所得税が徴収される。

 

「死亡退職」や「年金形式」で退職金を受け取る場合は?

 

被相続人の脂肪退職によって、死亡から3年以内に相続人に支払われた退職金は相続税の対象になる為、

所得税を支払う必要はありません。

死亡退職金のへの相続税は「500万円×法定相続人の人数」を超えた分にかかります。

例えば、法定相続人が子供3人の場合、1,500万円を超えた分です。

 

なお、法定相続人の中に被相続人の配偶者が含まれている場合、別途優遇措置があります。

税務署や税理士などに確認すると良いでしょう。また、退職金を年金形式で受け取る場合は、

所得の区分は「雑所得」となります。退職所得控除の対象外となり、申告も分離課税方式ではなくなります。

 

年の途中で退職して再就職していない場合

 

 

女性の方は特にですが、妊娠などを機に職場を離れるケースがあると思います。

そんな時、実は確定申告をすると税金還付の可能性が高くなるかもしれないのです。

 

確定申告をすれば税金が戻る可能性が大

 

定年、自己都合やリストラ、結婚など、年の途中で退社して再就職していない場合は、年末調整を受けていない事になります。

前職場からもらった給与所得の源泉徴収票も、「給与所得控除後の金額」欄や、「所得控除の額の合計」欄が、

空白になっているはずです。このような人たちは確定申告をする必要があります。

 

退職後、臨時のアルバイトやパートなどで年末調整を受けていなければ、その分収入をプラスして申告します。

もちろん源泉徴収票は支払先の件数が必要です。それぞれの給与収入を合算して申告します。

 

在職中、すでに給与から源泉徴収されている所得税は、一年間働いて、同程度の収入がある見込みの基に課税されています。

もし年の途中で会社を辞め、その後無収入だったとすると、その年の収入は見込みよりも少なくなりますから、

納めるべき税金の額も下がります。

 

また、在職中に源泉徴収された給与所得からは、退職後に自分で支払った社会保険や生命保険、

地震保険などの各種控除が引かれていません。

これらの控除に該当する人は確定申告をすれば、その分も税金が安くなります。

 

確定申告をしないと翌年の住民税にも影響

 

本来納めるべき金額を超えて税金を支払っている場合、自分で確定申告をしなければ、過払い分が戻ってくることはありません。

また、申告しないと翌年の住民税額にも影響します。

 

住民税は所得を基準に決まります。居住地の市区町村には、全勤務先から源泉徴収票と同様の書類が、

住民税を計算する資料として提出されます。中途退社した場合、この資料に生命保険料控除などは適用されていません。

その為、住民税も高く計算されてしまう可能性があるのです。

 

給与所得だけなら申告書の記入は簡単

 

申告書の作成は、退職時に全職場からもらった源泉徴収票のほか、生命保険をはじめとする各種控除証明書が必要になります。

失業中に短期のアルバイトなどで収入を得ていたら、その分の源泉徴収票も入手します。

生命保険料や地震保険料の控除は年末に保険会社から控除証明書が送付されてきますから、保管しておきます。

 

また、扶養控除、配偶者控除、そして国民健康保険や国民年金などの社会保険料の控除も忘れないようにしたいところです。

国民年金保険料も控除証明書が送られてきますから、申告書には添付が必要です。もちろん基礎控除は必ず記入する事です。

これも意外と記載漏れが多い欄なので、要注意です。

 

厚生年金や国民年金をもらっている場合

 

 

厚生年金や国民年金をもらっている場合も、確定申告が必要になる場合があります。

いったい、どのような場合に確定申告が必要なのか以下にまとめました。

 

公的年金も源泉徴収されている

 

一口に年金といっても、種類は2つに分けられます。

1つは国民年金、厚生年金、共済年金といった「公的年金等」、それ以外の個人で加入した年金型の生命保険などは、

「公的年金等以外の年金」といわれています。

 

公的年金も一定額(65さいみまん108万円、65歳以上158万円)を超えた場合には所得税がかけられており、

支払時に源泉徴収されています。

毎月1月ごろに日本年金機構から「公的年金の源泉徴収票」が届くので、内容をチェックすると良いでしょう。

 

源泉徴収額は最初に年金を請求する時に提出する年金請求書に、配偶者や扶養者の内容を記入する事で決まり、

その後は年に一度「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」を提出して、翌年の源泉徴収額を決定します。

この申告書を提出しないと、一律に7.6575%が徴収されます。

 

【年金の種類】

公的年金等 公的年金等以外の年金
課税対象 ①国民年金、厚生年金、共済年金
②恩給(一部除く)や以前の勤務先などから支給される年金
③確定給付企業年金契約にもとづいて支給される年金
①生命保険契約による年金
②生命共済契約による年金
③互助年金
非課税 ①遺族年金 ②障害年金  

 

確定申告をした方が得になるケース

 

年金収入が公的年金のみで、年間400万円以下、それ以外の所得が20万円以下の場合、

確定申告をする必要はありません。(外国の法令に基づく年金等を除く)。

しかし、公的年金には年末調整がありませんから、すでに源泉徴収された税金は社会保険料や生命保険料、

地震保険料などの控除が計算されていません。

 

また、年間10万円以上の医療費を支払った人は医療費控除を受ける事ができますが、その為には確定申告が必要です。

前述の「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」を提出していない場合も、確定申告をすれば差額の還付が期待できます。

 

このように年金収入が400万円以下でも、支給時に源泉徴収されている場合は、一度確定申告の資産をしてみると良いでしょう。

各種控除などを差し引くと、税金が戻ってくる可能性があります。

なお、年金収入の確定申告をしなくてもいい場合でも、住民税の申告は必要です。

ただし、所得税の確定申告をしておけば、税務署から居住する市区町村に所得金額が通知されるため、

自分で申告する必要はなくなります。

 

公的年金等控除額は金額や年齢で変わる

 

公的年金は「雑所得」の扱いとなります。

雑所得には必要経費が認められますが、公的年金の場合はそれに代わるものとして、

控除額が年金の額や年齢によって決まっています。

 

控除を差し引いた公的年金等の所得の計算方法は下の表のとおりです。

ここで求めた金額を、申告書A第一表の「所得金額」の「雑」欄に記入します。

なお、第二表の「所得の内訳」の「種目・所得の生ずる場所又は給与などの支払者の氏名・名称」欄には、

「厚生労働省」と記入します。

 

前述のように、生命保険料や社会保険料の控除だけでなく、医療費を10万円以上支出した場合は、

「医療費控除」も忘れずに申告するように気を付けたいところです。

 

公的年金等の所得の計算方法

 

【65歳未満の人】

公的年金等の収入金額 公的年金等の所得(雑所得)
70万円まで 0円
70万円超~130万円未満 公的年金等の収入金額-70万円
130万円以上~410万円未満 公的年金等の収入金額×0.75-37万5,000円
410万円以上~770万円未満 公的年金等の収入金額×0.85-78万5,000円
770万円以上 公的年金等の収入金額×0.95-155万5,000円

 

【65歳以上の人】

公的年金等の収入金額 公的年金等の所得(雑所得)
120万円まで 0円
120万円超~330万円未満 公的年金等の収入金額-120万円
330万円以上~410万円未満 公的年金等の収入金額×0.75-37万5,000円
410万円以上~770万円未満 公的年金等の収入金額×0.85-78万5,000円
770万円以上 公的年金等の収入金額×0.95-155万5,000円

 

●公的年金に対する控除額は、年金額や年齢によって異なります。

●公的年金から控除額を差し引いた公的年金等の所得は「雑所得」扱いとなります。

 

公的年金をもらいながら仕事をしている場合

 

 

公的年金をもらいながら仕事をしている場合、年末調整を行っているはずです。

ですが、年末調整をしていても確定申告が必要になるケースがあります。

 

単独での申告は×!給与所得と合算する!

 

厚生年金や国民年金などの公的年金は、原則として支払われる月ごとに、一定の金額が源泉徴収されています。

年末調整が行われない為、自分で確定申告をしないと、自分で確定申告をしないと、

源泉徴収額と実際の所得税額との差額を生産できません。

 

申告に際しては、公的年金による所得は「雑所得」扱いとなります。

ただし、給与所得と合算して行われなければ、どちらか一方だけの申告は認められていません。

 

給与収入85万円超は確実に申告が必要!

 

申告が義務付けられているのは、公的年金の収入金額が年間400万円超、もしくは年間400万円以下であっても、

嘱託やアルバイトなどで得た給与などの所得の合計が年間20万円超の場合です。

後者をもう少し噛み砕くと、公的年金以外の所得が給与だけであれば、

年間の給与が収入ベースで85万円超になっていると、申告が必要という事です。(給与所得控除額が65万円分ある為)。

 

申告した結果、収入の合計金額や控除の内容によって、還付金を受けられる場合、追加納税が必要になる場合、

いずれもあり得ますが、条件に当てはまる人は必ず申告が必要です。

また、申告の義務がなくても、社会保険料などを自分で払っている場合、確定申告により控除を受けることができます。

 

【公的年金と給与の両方をもらっている人の税額計算の流れ】

  • 公的年金収入-公的年金等控除=雑所得
  • 給与収入-給与所得控除=給与所得
  • 雑所得+給与所得-各種所得控除=課税所得
  • 課税所得×税率=税額
  • 税額=税額控除=納税額(還付税額)

 

生命保険会社などの個人年金をもらっている場合

 

 

生命保険会社などから個人年金を受け取っている方も、最近は多くいるはずです。

実は、この個人年金の収入は基本的に確定申告が必要です。

 

個人年金受給者は原則申告の必要あり

 

年金には公的年金のほかに、個人で民間の生命保険会社などと契約し、年金形式で受け取る個人年金があります。

個人年金を受け取っている場合は原則、確定申告が必要です。

ただし、給与所得と退職所得以外の所得(雑所得や配当所得など)の合計が20万円以下なら申告不要です。

申告不要でも、控除の内容によっては、申告すれば還付を受けられる可能性があります。

 

公的年金と個人年金は同じ「雑所得」として扱われますが、所得の計算方法が異なる為、分けて計算した上で、

所得を合計して申告します。公的年金の所得の計算方法は、上記を参考にして下さい。

一方、個人年金の所得計算は、生命保険会社などから送られてくる支払調書(会社によって名称は異なります)

に書かれた金額を転記すればOKです。

 

以上、確定申告のやり方:会社を退職後、年金で生活している場合…という話でした。