こんにちは。PCライターとして活動して20年、これまでに数千台以上のPCトラブルに向き合ってきた43歳の筆者です。Windows XPの時代から、Vista、7、8、10、そして現在のWindows 11に至るまで、OSの進化と共に歩んできましたが、いつの時代も変わらない悩みがあります。それは「ネットワーク接続トラブル」です。
特に、リモートワークや自宅サーバーの管理、あるいは実家のPCサポートなどで「リモートデスクトップ(RDP)」を使おうとしたとき、急に繋がらなくなって冷や汗をかいた経験はありませんか? 「昨日は問題なく使えていたのに、今日はなぜか繋がらない」 「“接続を開始しています”の画面で止まってしまう」 「無慈悲な“接続できません”というエラーポップアップが出る」
締め切りが迫っている時や、緊急の対応が必要な時に限ってこの現象は起こります。この現象は、初心者から上級者まで誰しもが一度は通る道であり、ITエンジニアであっても頭を抱える瞬間です。
リモートデスクトップが接続できない原因は実に多岐にわたります。単純な設定のチェック漏れといったヒューマンエラーから、ルーターやプロバイダを含むネットワーク環境の複雑な要因、あるいはWindowsの大型アップデートによるセキュリティ仕様の変更や予期せぬ不具合まで様々です。しかし、ここで焦って設定を闇雲にいじり回してしまうのが一番の悪手です。エラーには必ず原因があり、論理的に手順を追って確認していけば、解決への糸口は必ず見つかります。
この記事では、私が長年の経験の中で実際に遭遇し、解決してきた数多くの事例をもとに、接続できない原因の特定方法から具体的な解決策までを徹底的に解説します。単なる手順書ではなく、「なぜその設定が必要なのか」という背景も踏まえ、専門用語で煙に巻くのではなく、誰にでもわかる言葉で紐解いていきます。ぜひ最後までお付き合いいただき、快適なリモート環境を取り戻してください。
【この記事で分かること】
- リモートデスクトップ接続エラーの全パターンと根本原因
- Windows設定(ファイアウォール・権限)の修正手順
- ルーターやWi-Fiなどネットワーク環境の改善方法
- ポート開放やレジストリ操作などプロの解決テクニック
リモートデスクトップ 接続できない原因とまず確認すべき基本ポイント
リモートデスクトップ接続がうまくいかない時、多くの人は「IPアドレスの設定が間違っている?」「DNSサーバーが応答していない?」といった具合に、何か高度で技術的なネットワークの設定ミスを疑い、難しく考えすぎてしまう傾向があります。しかし、実際のトラブルシューティングの現場を見てみると、原因の8割近くは非常に基本的な確認事項の漏れや、Windowsの標準的な仕様を正しく理解していないことに起因しています。
まずは深呼吸をして、PCの再起動を行ってみてください。Windowsは長期間起動し続けていると、バックグラウンドのサービスが不安定になることがあります。再起動だけでサービスがリセットされ、あっさり繋がることも珍しくありません。また、LANケーブルの爪が折れて抜けかけていないか、Wi-Fiルーターのランプは正常かといった物理的なチェックも重要です。その上で、これから解説する各ポイントを一つずつ確認していくことが、解決への最短ルートとなります。基本に忠実な診断こそが、最も早く正解にたどり着く方法なのです。
参照元:リモート デスクトップの切断エラーのトラブルシューティング – Microsoft Learn
リモートデスクトップ 接続できない代表的な原因は何?初心者が陥りやすい落とし穴
リモートデスクトップ接続におけるトラブルで、特に初心者が最も陥りやすく、かつ気付きにくいのが「OSのエディション違い」と「ネットワークの場所(プロファイル)」の問題です。
まず、Windowsには家庭向けの「Home」と、ビジネス向けの「Pro」というエディションが存在しますが、この違いが決定的な壁となります。標準機能としてリモートデスクトップの「ホスト(操作される側)」になれるのは、「Pro」以上のエディションに限られています。 多くの家庭用PCや量販店で販売されているノートPCは「Home」エディションが搭載されています。Homeエディションでも「クライアント(操作する側)」にはなれるため、会社から支給されたProのPCを自宅のHome PCから操作することは可能です。
しかし、逆の「自宅のHome PCを外部から操作する」ことは、標準機能では不可能です。これを解決しようと設定画面を探し回っても、項目自体が存在しないため、何時間も無駄にしてしまうケースが後を絶ちません。解決策としては、Microsoft StoreからProエディションへのアップグレード(有料)を行うか、Chromeリモートデスクトップなどのサードパーティ製アプリを使用する必要があります。
次に多いのが、接続先情報の誤りです。特にホスト名(PCの名前)やIPアドレスの間違いは頻発します。家庭内LANでは、ルーターが各機器にIPアドレスを自動割り当てする「DHCP」という仕組みが動いています。これにより、昨日まで「192.168.0.10」だったPCが、ルーターの再起動やスマホの接続タイミングによって、今日は「192.168.0.15」に変わっていることは日常茶飯事です。古いショートカットファイルを使い続けていると、この変化に対応できず接続エラーとなります。
| 項目 | Windows 10/11 Home | Windows 10/11 Pro |
|---|---|---|
| クライアント機能 (操作する) | 〇 可能(標準搭載) | 〇 可能(標準搭載) |
| ホスト機能 (操作される) | × 不可(機能制限) | 〇 可能(サーバーになれる) |
| ドメイン参加 | × 不可 | 〇 可能(社内NW管理に必須) |
| BitLocker | × (デバイス暗号化のみ) | 〇 可能(ドライブ全体の暗号化) |
| グループポリシー管理 | × 不可 | 〇 可能(詳細設定が可能) |
Windows側の設定ミスで接続できないケース|リモート設定の見直し
Windowsの設定画面において、リモートデスクトップ機能が「有効」になっているかどうかを確認するのは基本中の基本ですが、ここにも落とし穴があります。単にスイッチをオンにするだけでなく、「詳細設定」に隠れたオプションが接続を阻害しているケースがあるからです。
Windows 11の場合、設定メニューの「システム」から「リモートデスクトップ」へと進みます。ここでトグルスイッチが「オフ」になっていれば当然接続できませんが、オンになっていても接続できない場合は、「詳細設定」を開いてみてください。そこに「ネットワークレベル認証(NLA)を使用しているコンピューターからのみ接続を許可する(推奨)」というチェックボックスがあります。 NLAは、接続を確立する前にユーザー認証を行うことで、サーバー側のリソース消費を抑え、DoS攻撃などのリスクを減らす優れたセキュリティ機能です。しかし、接続元のPCが古いOS(Windows 7以前など)であったり、特殊なRDPクライアントアプリ(Linuxやスマホアプリの一部)を使用している場合、このNLAの認証プロセスに対応できず、門前払いされることがあります。
トラブルシューティングの段階では、一時的にこのチェックを外して接続テストを行うことが非常に有効です。もしこれで繋がるようになれば、原因はネットワークではなく認証プロセスにあると特定できます。 また、設定を変更した後は必ず「適用」ボタンを押し、念のためPCを再起動して設定を確実にサービスへ反映させる癖をつけることも、トラブルを未然に防ぐコツです。設定画面のUIはOSのバージョンアップで頻繁に変更されるため、迷ったときは「設定の検索」窓から「リモート」と入力して機能を探すのが確実です。
参照元:Windows でのリモート デスクトップの使い方 – Microsoft Support
会社PC・自宅PCで接続できない時のアカウント権限チェック
リモートデスクトップ機能自体は有効になっていても、接続しようとしている「ユーザーアカウント」に適切な接続権限が与えられていなければ、ログイン画面までは到達できても、認証ではじかれてしまいます。 通常、PCの管理者権限を持つ「Administrator」グループのアカウントであれば、デフォルトでリモート接続が許可されています。しかし、家族で共用しているPCや、企業で管理されているPCにおいて「標準ユーザー」として作成されたアカウントで接続しようとする場合は、明示的に許可を与える必要があります。
具体的には、「Remote Desktop Users」という特定のローカルグループに、そのユーザーを追加しなければなりません。 確認方法は、「設定」→「リモートデスクトップ」→「リモートデスクトップユーザー」を選択し、そこに接続したいユーザー名が含まれているかをチェックします。もしリストになければ、「追加」ボタンから対象のユーザーアカウント名(メールアドレスの場合もある)を入力して追加します。
さらに重要なのが「パスワードの有無」です。Windowsのセキュリティポリシーでは、デフォルトで「空のパスワード(パスワードなし)」のアカウントによるリモート接続を禁止しています。自宅で自分しか使わないからといってパスワードを設定していないアカウントには、外部からリモート接続することはできません(設定で許可することも可能ですが、セキュリティ上極めて危険なため推奨されません)。必ず強固なパスワード、あるいはPINコードではなくログインパスワードを設定してから接続を試みるようにしてください。これは、外部からの総当たり攻撃(ブルートフォースアタック)を防ぐための、Windowsの最後の砦とも言える仕様です。
参照元:PC でリモート デスクトップを有効にする (ユーザーの許可) – Microsoft Learn
ファイアウォール設定が原因でリモートデスクトップが接続拒否される場合
接続できない原因として上位にランクインするのが、Windows Defender ファイアウォールや、サードパーティ製のセキュリティソフトによる通信の遮断です。 Windowsのファイアウォールは、現在接続しているネットワークが「プライベート(自宅や社内など信頼できる場所)」なのか、「パブリック(カフェ、空港、ホテルなど不特定多数がいる場所)」なのかによって、挙動を大きく変えます。
リモートデスクトップは通常、信頼できるプライベートネットワーク環境下での使用が想定されています。もし、自宅のWi-Fiに接続した際に誤って「パブリックネットワーク」として設定してしまっていると、ファイアウォールは「ここは危険な場所だ」と判断し、外部からの接続要求を受け付けるポート(TCP 3389)を自動的に閉じてしまいます。 これを確認するには、コントロールパネルから「Windows Defender ファイアウォール」を開き、「Windows Defender ファイアウォールを介したアプリまたは機能を許可」という項目を見ます。リスト内の「リモートデスクトップ」にチェックが入っているか、そしてそのチェックが「プライベート」だけでなく、現在の接続状況に合わせて許可されているかを見極める必要があります。
さらに厄介なのが、ノートンやマカフィー、ESETといった市販のウイルス対策ソフトを入れている場合です。これらはWindows標準のファイアウォールを無効化し、独自の強力なファイアウォールを展開します。この場合、Windows側の設定をいくら見直しても意味がありません。セキュリティソフト側の設定画面を開き、「ネットワーク保護」や「ファイアウォール設定」の中で、ポート3389の通信が許可されているか、あるいは接続元のIPアドレスが信頼されているかを確認する必要があります。ソフトによっては「サイレントモード」や「ゲームモード」になっており、ブロックした通知すら出さずに静かに遮断していることもあるため、ログの確認も有効です。
ルーターやWi-Fiが不安定でリモートデスクトップが接続できない時の確認
PC側の設定が完璧でも、その間をつなぐ「道」であるネットワーク機器に問題があれば接続は確立されません。特にWi-Fi接続の場合、目に見えない電波の問題が大きく影響します。 リモートデスクトップは、画面の描画情報をリアルタイムで転送し続けるため、Webサイトの閲覧や動画のバッファリング再生とは異なり、一瞬の通信断絶(パケットロス)が命取りになります。電子レンジの使用時に発生する強力な電波干渉や、近隣の住宅からのWi-Fiルーターとのチャンネル干渉によって、接続が不安定になったり、タイムアウトしてしまうことは頻繁に起こります。
また、自宅外(インターネット経由)から自宅のPCに接続しようとしている場合は、ルーターの設定難易度が跳ね上がります。インターネット側から来た通信を、家の中にある特定のPC(ローカルIPアドレス)へ的確に誘導するための「ポートマッピング(ポート開放)」設定が必須となるからです。これが正しく設定されていないと、ルーターに届いた接続要求は行き場を失って破棄されます。 さらに、プロバイダから貸与されたルーターの下に、自分で購入した高性能ルーターを接続している「二重ルーター」環境になっている場合も要注意です。二重の壁ができている状態なので、両方のルーターで適切に設定を行わないと通信が通りません。
まずは問題の切り分けとして、同じ家の中(ローカルネットワーク内)で接続できるかを確認しましょう。ローカルで繋がるならPCの設定はOKで、ルーターやインターネット回線の問題です。ローカルでも繋がらないなら、PC本体やWi-Fi接続そのものの問題を疑うべきです。ルーターのファームウェアが古いために特定の通信でバグを起こしていることもあるので、管理画面からアップデートを確認するのも一つの有効な手段です。
最新アップデート後に接続できない症状が出る理由
「昨日は使えていたのに、Windows Updateをしたら急に使えなくなった」。この現象は、残念ながらWindowsの歴史の中で定期的に発生しています。 マイクロソフトはセキュリティ強化のために定期的に更新プログラムを配信していますが、これに含まれるセキュリティパッチが、リモートデスクトップの認証プロトコルや暗号化方式に変更を加えることがあります。
過去に大きな話題となったのが、Oracleの暗号化オラクル修復(CredSSP)に関する更新です。これにより、サーバー側(接続されるPC)とクライアント側(接続するPC)のパッチ適用状況に食い違いがあると、「認証エラー」として接続が拒否される事態が発生しました。セキュリティを高めるための更新が、結果として利便性を損なうケースの典型です。 このような場合、エラーメッセージに特定のコード(例:0x80004005など)が含まれていることが多いです。
対処法としては、まずWindows Updateの履歴を確認し、直近(ここ数日以内)でインストールされた更新プログラム(KB番号)を特定します。そのKB番号と「リモートデスクトップ 接続できない」というキーワードを組み合わせて検索を行うと、世界中で同様の症状に悩むユーザーの情報や、マイクロソフトからの回避策が見つかることがあります。 場合によっては、問題のある更新プログラムを一時的にアンインストールすることで回復することもありますが、これはセキュリティリスクを伴うため最終手段です。まずは双方のPCを最新の状態までアップデートしきることで解消されることも多いので、中途半端な更新状態で止まっていないか確認しましょう。
参照元:Windows の更新に関するトラブルシューティング – Microsoft Support
VPN使用時にリモートデスクトップ 接続できない問題が起きる原因
テレワークの普及に伴い、VPN(Virtual Private Network)経由で会社のPCに接続するスタイルが一般的になりました。しかし、VPN接続自体は成功しているのに、その中のリモートデスクトップだけがつながらないという相談も増えています。 これには「DNS(名前解決)」の問題が大きく関わっています。通常、社内のPCに接続する際は「Work-PC01」のようなコンピューター名を使用しますが、VPN環境下では、自宅のPCが社内のDNSサーバーを正しく参照できず、その名前がどのIPアドレスなのか分からない状態になることがあります。この場合、PC名の代わりに「192.168.1.50」といったIPアドレスを直接指定することで接続できるケースが非常に多いです。
また、「スプリットトンネリング」の設定ミスも考えられます。これは、インターネット閲覧などの通信は自宅の回線を使い、社内へのアクセスだけVPNを通す技術ですが、この振り分け設定が間違っていると、リモートデスクトップの通信がVPNトンネルに入らず、迷子になってしまいます。 さらに、MTU(Maximum Transmission Unit:一度に送れるデータの最大サイズ)の不一致も深刻です。VPNを通すとヘッダー情報が付与される分、送れるデータ量が減ります。これを知らずに大きなパケットを送ろうとすると、断片化(フラグメンテーション)が発生し、通信が著しく遅くなったり切断されたりします。
VPN越しのトラブルはネットワーク経路が複雑になるため、原因の切り分けが難しいですが、まずは以下の3ステップで確認しましょう。
- VPN接続確認: タスクバーのVPNアイコンなどで、接続自体は確立しているか。
- 疎通確認: コマンドプロンプトで
ping [接続先IPアドレス]を実行し、応答が返ってくるか。 - 名前解決の回避: コンピューター名ではなく、IPアドレスでの接続を試す。 これらを試して会社のIT管理者に報告すれば、スムーズな対応が期待できます。
私が実際に試して直した“接続できない”トラブルの改善方法7選

ここからは、私がこれまでの20年のライター活動やサポート現場で実際に遭遇した難解なトラブルと、それを解決に導いた具体的な7つの方法を紹介します。 教科書的な回答だけでなく、現場で試行錯誤した末に見つけた「泥臭いけれど効果のある方法」や、プロならではの視点での設定変更も含まれています。PC環境は千差万別ですので、全ての方法が万人に効くわけではありませんが、手詰まり感を感じている方にとっては、状況を打破する強力なヒントになるはずです。専門的な有料ツールを使わずに、Windows標準の機能だけで確認・修正できるものを中心にピックアップしましたので、一つひとつ順番に試してみてください。
【以下で分かること】
- ポート3389の確認コマンドと開放手順
- NLA認証エラーの回避設定
- IPアドレス固定化による接続安定化
- スリープ設定の見直しとWake on LAN
RDPポート3389が塞がって接続できない時の確認と解放手順
リモートデスクトップは通常、「TCP 3389」というポート番号を使用して通信を行います。このポートが何らかの理由で閉じていたり、他のアプリケーションと競合していたりすると、接続は確立されません。 私がまず行うのは、このポートが正しく「待ち受け(Listening)」状態にあるかの確認です。これにはWindowsの「PowerShell」または「コマンドプロンプト」を使用します。管理者権限で起動し、以下のコマンドを入力してみてください。
netstat -ano | find "3389"
もし結果が表示され、状態が「LISTENING」になっていれば、PC自体は接続を待っている正常な状態です。何も表示されない場合は、リモートデスクトップサービス自体が起動していないか、ポート番号が変更されている可能性があります。 レジストリの設定でポート番号が意図せず変更されているケースもあります。レジストリエディタ(regedit)を開き、以下のパスを確認します。 HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Control\Terminal Server\WinStations\RDP-Tcp この中にある PortNumber という値が、10進数で「3389」になっているか確認してください。ここが別の数字になっていれば、その番号に合わせて接続(例:192.168.1.10:12345)するか、3389に戻す必要があります。
過去には、セキュリティ対策のために意図的にポート番号を変更していたことをユーザーが忘れており、標準ポートで接続しようとして失敗していた事例もありました。また、ウイルス対策ソフトがWindowsの設定を上書きして3389をブロックしていた事例もあります。この場合はソフト側で「例外ルール」を作成し、3389番ポートの通信を許可する設定を追加することで解決しました。
参照元:Windows および Windows Server でリモート デスクトップのリッスン ポートを変更する – Microsoft Learn
リモートデスクトップのネットワークレベル認証(NLA)が原因で接続できない場合
「認証エラーが発生しました」「このコンピューターはリモートコンピューターに接続できません」というメッセージが出る場合、犯人はネットワークレベル認証(NLA)である可能性が高いです。 前述の通り、NLAはセキュリティを高める機能ですが、トラブル時にはこれが障壁となります。私が遭遇したケースでは、接続元のPCのOSが古く、最新のNLAプロトコルに対応していなかったため、接続先のPC側でNLAを一時的に無効にすることで解決しました。
手順は、「システムのプロパティ」を開き、「リモート」タブにある「ネットワークレベル認証でリモートデスクトップを実行しているコンピューターからのみ接続を許可する」のチェックを外すだけです。 もし設定画面がグレーアウトしていて変更できない場合は、「ローカルグループポリシーエディター(gpedit.msc)」を使用します(Pro版以上のみ)。 コンピューターの構成 → 管理用テンプレート → Windows コンポーネント → リモート デスクトップ サービス → リモート デスクトップ セッション ホスト → セキュリティ この中にある「ネットワークレベル認証を使用したユーザー認証を必要とする」を「無効」に設定します。
これで接続できるようになれば、原因はNLAにあったと確定できます。ただし、これはセキュリティレベルを下げる行為になるため、恒久的な対策としては推奨されません。あくまでトラブルシューティングの一環として行い、接続できることが確認できたら、クライアント側のOSをアップデートしたり、認証情報を再設定したりして、最終的にはNLAを再度有効に戻して運用することを目指すべきです。これは応急処置として非常に強力な一手です。
端末間のIPアドレス不一致で接続できない時の対処方法
「昨日までデスクトップにあったショートカットアイコンから繋がっていたのに、今日は繋がらない」。この原因の多くは、接続先PCのIPアドレスが変わってしまったことにあります。 ルーターから自動的にIPアドレスを割り当てられるDHCP環境では、「リース期間」というものがあり、一定時間が経過したりPCを再起動したりすると、IPアドレスが変わることがよくあります。私がこれを解決した際は、まず接続先PCでコマンドプロンプトを開き、ipconfigと入力して現在のIPv4アドレスを確認しました。案の定、ショートカットに保存されていたアドレスとは末尾が異なっていました。
根本的な解決策として行ったのは、接続先PCのIPアドレスを「固定(静的IP)」にすることです。 「設定」→「ネットワークとインターネット」→「イーサネット(またはWi-Fi)」→「IP割り当て」の編集から、手動設定に切り替えます。ここで、ルーターのDHCP割り当て範囲外(例:ルーターが192.168.0.2~100を配っているなら、192.168.0.200など)のIPアドレスを設定しました。 これにより、PCを再起動しても常に同じ住所(IPアドレス)を持つことになり、接続エラーは激減しました。 もしPC側での設定が難しい場合は、ルーター側の機能で「DHCP固定割り当て(MACアドレスバインディング)」を使用するのもスマートな方法です。これはルーター側で「このPCには常にこのIPを渡す」と決めてしまう設定です。
接続先PCのスリープでリモートデスクトップできない問題を防ぐ設定
これは笑い話のようで本当によくある話ですが、「接続できない!」と大騒ぎして現地に行ってみたら、単にPCがスリープモードに入って電源が落ちていた、というケースです。 リモートデスクトップは、接続先のPCが起きていなければ通信できません。初期設定のWindowsは、一定時間操作がないと省電力のために自動的にスリープする設定になっています。
私が自宅サーバー化したPCでこれに直面したときは、電源オプションの設定を徹底的に見直しました。 「設定」→「システム」→「電源とバッテリー」から、「画面とスリープ」の項目を開き、「電源接続時に次の時間が経過した後にデバイスをスリープ状態にする」を「なし」に変更します。これでPCは勝手に眠らなくなります。 ノートPCの場合はさらに注意が必要です。「カバーを閉じたときの動作」の設定で、カバーを閉じても「何もしない」設定にしておかないと、蓋を閉めた瞬間に通信が切れます。
また、どうしても普段はスリープさせておき、使う時だけ起こしたい場合は、「Wake on LAN(WoL)」を導入する必要があります。これは、マジックパケットと呼ばれる特殊な信号をネットワーク経由で送り、PCを叩き起こす技術です。これにはPCのBIOS/UEFI設定での許可、ネットワークアダプタの設定、そしてルーターの設定の3つが必要となり難易度は高いですが、省エネと利便性を両立できる強力な手段です。まずは「スリープなし」運用で安定するかを試すのが第一歩です。
Wi-Fiから有線LANへ切り替えたら接続できない問題が改善した実例
無線技術は進化していますが、やはり有線LANの安定性と信頼性には敵いません。 あるクライアントの環境で、どうしても接続が数分おきに切断される、画面がカクつく、接続までに時間がかかるといった症状に悩まされていました。Wi-Fiのアンテナ表示は最大で、速度テストも良好に見えました。しかし、集合住宅で周囲に多数のWi-Fiアクセスポイントがあり、目に見えない電波干渉やパケットロスが断続的に起きていたのです。
診断として、長いLANケーブルを用意して一時的にルーターとPCを有線で直結してみたところ、嘘のように全ての不具合が解消し、サクサク動くようになりました。 Wi-Fiは、電子レンジやBluetooth機器、コードレス電話、さらには壁の中の断熱材や鉄骨など、あらゆるものの影響を受けます。リモートデスクトップはping値(応答速度)の揺らぎ(ジッター)に敏感です。有線接続にすることで、パケットロスがほぼゼロになり、遅延も一定に保たれます。
もし配線の都合でどうしてもLANケーブルが引けない場合は、コンセント内の電気配線を使って通信する「PLCアダプター」の使用や、Wi-Fi中継機を導入して5GHz帯を使用するように固定するなど、電波品質を改善する対策が必要です。しかし、「接続できない」トラブルシューティングの段階では、まず有線で試して「ネットワーク機器の問題か、無線環境の問題か」を切り分けることが解決への近道となります。
Remote Desktopアプリの再インストールで突然つながるようになった理由
Windowsには従来からの「リモートデスクトップ接続(mstsc.exe)」と、Microsoft Storeから入手できる新しい「Microsoft リモート デスクトップ」アプリ(UWP版)の2種類が存在します。 私が経験した不可解なトラブルで、設定は全て正しいはずなのに接続できないというケースがありました。キャッシュのクリアや設定の初期化を試みてもダメ。そこで、試しに使用していたストアアプリ版を一度アンインストールし、PCを再起動してから再インストールしてみたところ、何事もなかったかのように接続できるようになったのです。
これは、アプリ内部の設定ファイルやキャッシュデータが破損していた、あるいはバックグラウンドのプロセスがゾンビ化して固まっていたことが原因と考えられます。特にストアアプリ版は自動アップデートが頻繁に行われるため、更新のタイミングでファイル整合性に不具合が起きることが稀にあります。 逆に、従来型の「mstsc.exe」でつながらない場合に、ストアアプリ版を試してみるとあっさり繋がることもあります。両者は内部的な接続エンジンやプロファイルの持ち方が微妙に異なるため、片方がダメならもう片方を試すというのは有効な戦略です。再インストールは数分で終わる作業ですが、意外なほど効果的です。どうにもならない時は、アプリ自体の入れ直しを疑ってみてください。
参照元:Microsoft リモート デスクトップ – Microsoft Store
リモートデスクトップ 接続できない時の最終チェックリストと再発防止策【まとめ】
ここまで、リモートデスクトップが接続できない様々な原因と対処法を見てきました。トラブルは突然やってきますが、冷静に原因を切り分けていけば必ず解決できます。 最後に、これまでの内容を総括したチェックリストを作成しました。接続できない事象に遭遇したら、このリストを上から順に確認してみてください。これらをクリアしていれば、99%の確率で正常に接続できるはずです。快適なリモート環境を取り戻し、ストレスのないPCライフを送りましょう。
リモートデスクトップ接続トラブル解決のための最終チェックリスト
- 接続先PCの電源が入っており、スリープ状態になっていないか(物理確認)
- WindowsのエディションがProまたはEnterpriseであるか(Homeではホスト不可)
- 「システムのプロパティ」でリモート接続が許可(オン)になっているか
- 接続しようとしているユーザーアカウントにパスワードが設定されているか
- IPアドレスに変更がないか確認し、可能であれば固定IPまたはホスト名を使用する
- 現在のネットワークプロファイルが「プライベート」になっているか
- Windows Defenderやセキュリティソフトのファイアウォールでポート3389が許可されているか
- ネットワークレベル認証(NLA)を一時的に無効にして接続できるか試す
- VPN接続の場合、接続が確立しているか、DNSの問題がないか(IP指定で繋がるか)
- リモートデスクトップアプリ自体の再インストールや、別のクライアントアプリを試す
コメント