動画編集作業も終盤に差し掛かり、いよいよ完成した作品を世に出そうと「書き出し」ボタンを押した瞬間、突然ソフトがフリーズしたり、「エラーが発生しました」という非情なメッセージが表示されたりして、途方に暮れた経験はありませんか。
特に長時間におよぶ高解像度動画の書き出しは、パソコンの性能を限界まで使い切る重い作業となるため、途中で処理が止まってしまうトラブルは珍しくありません。しかし、その原因のほとんどは、ソフトのバグではなく、実はパソコンの環境設定や編集データ側のちょっとした問題にあることが非常に多いのです。
本記事では、プロの視点から、書き出しエラーが起きるメカニズムを分かりやすく解説し、誰でもすぐに実行できる具体的な解決策を、国内外で人気の主要動画編集ソフトに対応してご紹介します。あなたの貴重な時間を守り、快適な動画制作ライフを取り戻すための完全ガイドとして活用してください。
【この記事で分かること】
- 動画編集ソフトで書き出しが失敗する根本的な原因と特定方法
- Premiere Pro、DaVinci Resolve、CapCutなどソフト別の具体的な解決手順
- 書き出し中にパソコンの動作が重くなる、処理が遅くなる現象への対策
- 将来的なエラーを防ぐために必要なパソコンのメモリやストレージ環境の最適化
- 書き出しエラーの原因を特定しよう|動画編集ソフトでよくあるトラブルとは
- ソフト別に見る書き出しエラーの対処法|Premiere Pro・DaVinci・CapCut対応
- 書き出しエラーを防ぐためのパソコン環境と設定の見直し方
書き出しエラーの原因を特定しよう|動画編集ソフトでよくあるトラブルとは
動画編集の書き出しは、編集プロジェクトファイルに記録された膨大な指示(カット、エフェクト、テロップ、色補正など)を、最終的な一本の動画ファイル(MP4やMOVなど)に変換する「レンダリング処理」と「エンコード処理」が同時に行われる、非常に負荷の高い作業です。
そのため、システムリソース(CPU、GPU、メモリ)が不足したり、ソフトウェア側の設定が不適切だったりすると、処理が途中で中断し、書き出しエラーとして表面化します。原因を特定せずに手当たり次第に対処するよりも、まずはエラーが起きるメカニズムを理解することが、迅速な解決の第一歩となります。
動画編集ソフトで書き出しエラーが起きる主な原因3つ
動画編集における書き出しエラーは多岐にわたりますが、プロの現場で遭遇するトラブルを分析すると、その根本原因は以下の三つのカテゴリに集約されることが分かります。これらの原因は複雑に絡み合っていることが多いため、一つずつ切り分けてチェックしていくことが重要です。
一つ目の原因は、パソコンのハードウェアリソースの不足です。4Kや8Kといった高解像度の動画、あるいは複雑なエフェクト(ノイズ除去、手ブレ補正、高度なカラーグレーディングなど)を多用したプロジェクトを書き出す際、CPU(中央演算処理装置)やGPU(画像処理装置)の処理能力が追いつかなくなったり、メモリ(RAM)が限界まで消費されたりすることで、ソフトがクラッシュしたり、書き出し処理がタイムアウトしたりします。
特にノートパソコンや古いデスクトップPCを使っている場合、このリソース不足によるエラーが最も頻繁に発生します。動画編集は他の作業と比較しても段違いに大量の計算リソースを必要とするため、余裕を持ったスペックが求められます。
二つ目の原因は、出力先や編集データの問題です。具体的には、書き出し先のストレージ容量が足りていない場合、あるいは書き出し先のドライブが不安定(外付けHDDの接続不良など)な場合にエラーが起こります。また、編集タイムライン上に破損した素材ファイル(カメラ側で記録に失敗したクリップ、ダウンロードに失敗した音声ファイルなど)が残っていると、その部分を処理しようとした瞬間にエラーが発生することもあります。
特定の部分で必ず止まる場合は、この素材ファイルの破損を疑うべきでしょう。さらに、プロジェクトファイル自体が大規模になりすぎたことで、内部的にデータが破損し、書き出しが不可能になるケースも存在します。
三つ目の原因は、ソフトウェア環境や設定の不一致です。動画編集ソフトのバージョンが最新でないためにOSやGPUドライバーとの間で互換性の問題が発生したり、あるいは使用しているコーデック(映像を圧縮・伸長するための技術)の設定が適切でなかったりすると、エラーの原因となります。
例えば、ソフトのメジャーアップデート後に特定の古いコーデックでの書き出しがサポートされなくなった場合や、カスタム設定でビットレートやフレームレートを非現実的な値に設定してしまった場合に、書き出しプロセスが正しく完了できなくなります。特にH.265などの新しいコーデックを使用する際は、ソフトとハードウェアの両方が対応しているか確認が必要です。
動画編集ソフトの書き出しエラーの主な原因
| カテゴリ | 具体的な原因 | チェックポイント |
| ハードウェアリソース | メモリ(RAM)不足による処理オーバーフロー | タスクマネージャーでメモリ使用率を確認 |
| CPU・GPUのオーバーヒートまたは処理能力不足 | PCの冷却状況、推奨スペックとの比較 | |
| データ・ストレージ | 書き出し先のストレージ(SSD/HDD)の空き容量不足 | 書き出すファイルサイズの2倍以上の空きを確保 |
| 編集タイムライン上の素材ファイルの破損または読み込みエラー | エラー発生箇所の素材クリップを置き換え・削除 | |
| ソフトウェア・設定 | 動画編集ソフトのバージョンが古い、または不安定 | ソフト、OS、グラフィックドライバを最新に更新 |
| 不適切なコーデック、ビットレート、解像度の設定 | プリセット(既定の設定)で試す、シンプルな設定に戻す |
参照元:Adobe Creative Cloud ヘルプデスク – 動画レンダリングと書き出しの最適化
書き出しエラーは容量不足?保存先ドライブを確認しよう
書き出しエラーの原因として見落とされがちですが、最も単純でかつ発生頻度が高いのが、保存先ドライブの空き容量不足です。特に高解像度の動画ファイルは、完成した一つだけでも数十GB、場合によっては100GBを超えることも珍しくありません。
動画編集ソフトは、書き出し処理を行う際に、一時的に完成ファイルの数倍のデータを「一時ファイル(テンポラリファイル)」として保存領域に作成しながら処理を進めることがあります。そのため、書き出し後のファイルサイズだけを気にして空き容量を計算すると、途中で一時ファイルの作成ができなくなり、結果として「容量不足エラー」が発生してしまうのです。
内蔵ドライブに十分な空きがない場合は、必ず外付けのSSDやHDDなど、十分な容量を確保できる場所を保存先に指定し直してください。目安としては、最終的な出力ファイルサイズに対して、最低でも2倍、できれば3倍以上の空き容量を確保することが安全です。
また、保存先のドライブが、データを格納できる形式(ファイルシステム)になっているかどうかも重要なチェックポイントです。Windowsで一般的なNTFS、macOSで一般的なAPFSであれば大容量ファイルを扱えますが、古いFAT32形式などでは、1ファイルあたり4GBまでのサイズ制限があるため、長時間・高解像度の動画の書き出しは必ず失敗します。
このファイルシステムの違いを把握しておくことは、大規模なプロジェクトを扱う上での基礎知識となります。もしFAT32形式のドライブに書き出そうとしている場合は、NTFSまたはexFAT(Windows・Mac両対応)にフォーマットし直す必要があります。ただし、フォーマットするとドライブ内のデータはすべて消去されるため、事前に必要なデータをバックアップすることを忘れないでください。
ファイルシステム別の大容量ファイル対応
| ファイルシステム | 最大ファイルサイズ | 対応OS | 留意点 |
| FAT32 | 4GB | ほぼ全て | 4GB超の動画は書き出し不可 |
| NTFS | 16TB (理論上256TB) | Windows, Mac(読み取りのみ) | Windows環境での標準、Macでの書き込みは追加ソフトが必要な場合がある |
| APFS | 制限なし | macOS, iOS | Apple環境での標準、Windowsでの読み書きは不可 |
| exFAT | 制限なし | Windows, macOS | 大容量、互換性重視の場合におすすめ |
参照元:Microsoft サポート – ドライブのフォーマットとファイルシステムに関する解説
GPUやCPUの処理負荷が高すぎると書き出し失敗する理由
書き出しエラーの最も技術的な原因の一つが、GPU(グラフィック処理装置)やCPU(中央演算処理装置)にかかる処理負荷の過剰な集中です。動画のエンコード処理は、膨大なデータをリアルタイムで圧縮・変換する作業であり、この時、ほとんどの動画編集ソフトは、処理速度向上のために「GPUアクセラレーション」という技術を用いて、GPUの専用ハードウェアエンコーダー(NVIDIAのNVENCやIntelのQuick Sync Videoなど)を利用します。
このGPUアクセラレーションが有効になっている場合、GPUの使用率がほぼ100%に張り付くことになりますが、もしGPUの冷却が不十分であったり、電源供給が不安定であったりすると、GPUは規定の温度や電力の上限を超えないようにするために処理を強制的に停止させます。これが「書き出しエラー」としてソフト側で検出されるメカニズムです。
特に、デスクトップPCであってもホコリが溜まって冷却ファンが機能不全に陥っている場合や、ゲーミングノートPCのように排熱設計がシビアな機種で高負荷をかけ続けた場合に起こりやすい問題です。また、CPUでエンコードを行う設定にしている場合も、CPU温度が危険域に達すると同様に処理が中断します。
高負荷によるエラー発生の具体的な対策
高負荷が原因でエラーが発生していると判断した場合、以下の手順で負荷を軽減させる必要があります。第一に、書き出し処理中は他の重いアプリケーション(ウェブブラウザのタブを大量に開く、ゲームを起動するなど)をすべて終了させて、システムリソースを動画編集ソフトに集中させることです。第二に、ソフト側の書き出し設定を見直し、ビットレートを少し下げる、あるいは「VBR(可変ビットレート)」から「CBR(固定ビットレート)」に変更するなどして、エンコードの複雑性を減らすことです。
第三に、もしGPUアクセラレーションをONにしているなら、一時的にこれをOFFにしてCPUのみで処理を行う「ソフトウェアエンコーディング」に切り替えてみるのも有効です。時間はかかりますが、GPUの不安定さを回避できます。最後に、物理的な対策として、PC内部の清掃を行い、冷却ファンが正常に機能しているか確認し、可能であればPCクーラーや冷却台を使って本体を冷やしながら書き出しを行うことで、熱によるエラー発生のリスクを大幅に減らすことができます。
| 負荷軽減の対処法 | 効果 | 留意点 |
| 他のアプリの終了 | 確実にリソースを動画編集ソフトに集中させる | ウェブブラウザのタブだけでも意外とメモリを食う |
| ビットレートを下げる | エンコード処理の負荷を直接的に軽減する | 画質がわずかに低下する可能性がある |
| ソフトウェアエンコーディング | GPUの熱暴走や不安定さを回避できる | 書き出し時間が大幅に増加する |
| 冷却環境の改善 | ハードウェアの処理中断を物理的に防ぐ | デスクトップは内部清掃、ノートPCは冷却台を活用 |
参照元:NVIDIA Developers – GPUを活用した動画エンコーディング処理に関する技術文書
編集ソフトのバージョンやコーデック設定が原因のケース
動画編集ソフト、OS、そしてグラフィックドライバは、常に最新の状態に保つことが基本中の基本ですが、これらの「バージョン」が原因で書き出しエラーが発生するケースも多く存在します。特に、編集ソフトが大型アップデートされた直後などは、まだ安定性が確保されていない状態で、特定のコーデックや処理方法においてバグが発生し、書き出しに失敗することがあります。
バージョンの不一致による問題
例えば、最新のWindows OSに古いバージョンの動画編集ソフトを組み合わせている場合、OS側で提供される最新のハードウェアエンコーダー(Intel Quick Syncなど)へのアクセス方法が変わってしまい、ソフト側が対応できずにエラーを吐き出すことがあります。逆に、ソフトだけを最新にして、グラフィックドライバ(GeForceやRadeon)を数ヶ月更新していない場合も問題です。ドライバのアップデートには、最新のソフトやOSとの互換性を高める重要な修正が含まれていることが多いため、ドライバが古いと最新ソフトの高度な書き出し機能が正しく動作しない原因となります。エラーが発生したら、ソフトだけでなく、OSとグラフィックドライバの三点セットを最新にすることが、まず試すべき対策です。
コーデックと設定の落とし穴
また、書き出し設定における「コーデック」の選択も非常に重要です。動画圧縮の方式であるコーデックは、H.264やH.265(HEVC)、ProResなど様々な種類がありますが、特にカスタム設定で、出力フォーマットとコーデックが適切に対応していない組み合わせを選んでしまうと、ソフトが処理を完遂できません。たとえば、4K動画を編集しているのに、出力設定で古いプロファイルやレベル(例:H.264のLevel 4.0など)を選択してしまうと、その設定では4Kのデータ量を処理しきれないため、書き出しが失敗します。初心者の方は、ソフトに用意されている「YouTube 4K」や「H.264プリセット」など、標準的なプリセットを選んで書き出しを試みることが、最も安全で確実な解決策となります。プリセットであれば、最適なビットレートやプロファイルが自動的に設定されるため、手動設定によるエラーを回避できます。
| 問題のパターン | 対処法 | ソフト側での確認項目 |
| 古いグラフィックドライバ | NVIDIA/AMD公式サイトから最新版をインストール | ハードウェアエンコーディングが有効か確認 |
| OSとソフトの互換性 | OSとソフトの両方を最新バージョンに統一 | ソフトの公式ヘルプで動作環境を確認 |
| コーデック設定の不備 | H.264/H.265の「プロファイル」をHighに、「レベル」を5.1以上に設定 | プリセット(例:YouTube 1080p, 4K)を使用する |
| 特殊なファイル形式 | 一度中間コーデック(ProRes, DNxHRなど)で書き出し、再エンコードする | 編集データの破損がないかチェックする |
参照元:Apple Developer Documentation – ProResコーデックとその利用方法
一時ファイルやキャッシュの削除で改善することも
動画編集ソフトは、作業効率を高めるために、レンダリングデータやプレビュー用のキャッシュファイル、メディアのピークファイルなど、大量の「一時ファイル」をパソコンのストレージ(通常はシステムドライブ)に自動的に作成して保存しています。このキャッシュデータがあることで、複雑なエフェクトを適用してもプレビューがスムーズに行えるわけです。
しかし、この一時ファイルやキャッシュが古くなったり、破損したり、あるいはあまりにも大量に溜まりすぎたりすると、逆にソフトの動作を妨げ、最終的な書き出し処理を不安定にさせる原因となることがあります。特に、長期間にわたって多数のプロジェクトを編集していると、キャッシュフォルダはあっという間に数十GB、数百GBにも膨れ上がります。キャッシュファイル自体が破損していると、書き出しの際にその破損したデータを読み込もうとして処理がフリーズしたり、エラーを吐き出したりするのです。
この問題の解決策は単純で、ソフト内の設定から「メディアキャッシュを削除」あるいは「一時ファイルをクリア」といったオプションを実行することです。ほとんどの編集ソフトには、これらのキャッシュを管理・削除するための機能が搭載されています。この操作を行っても、元の編集データや素材ファイルが消えることはありませんのでご安心ください。キャッシュをクリアした後にソフトを再起動し、再度書き出しを試みるだけで、エラーが解消することが非常によくあります。特にメモリやストレージ容量に余裕がないパソコンで編集作業を行っている場合、このキャッシュクリアは定期的なメンテナンスとして習慣づけることを強く推奨します。
主要ソフトのキャッシュ削除手順(概要)
| ソフト名 | キャッシュ削除メニュー(例) | 削除のメリット |
| Premiere Pro | ファイル > プロジェクト設定 > メディアキャッシュ > 「削除」ボタン | 破損したキャッシュデータをリセットし、書き出しの安定性を向上させる |
| DaVinci Resolve | DaVinci Resolve > 環境設定 > システム > メディアストレージ > 「キャッシュファイルを削除」 | 不要なレンダーキャッシュを一掃し、ストレージ容量を解放する |
| CapCut | 設定 > 一般 > キャッシュをクリア | アプリの動作が軽快になり、起動時の読み込みエラーなどを防ぐ |
参照元:DaVinci Resolve 公式ドキュメント – パフォーマンス最適化ガイド
書き出しエラーが特定の動画で起きる時のチェックポイント
書き出しエラーが、全てのプロジェクトではなく、特定の編集データでのみ発生する場合、問題はパソコンの環境設定ではなく、その「特定のプロジェクトやタイムラインデータ」に起因している可能性が極めて高いです。このような特定の動画で発生するエラーは、問題の箇所を特定し、そこだけを修正することで、スムーズに解決できることが多いです。
エラー箇所を特定するための「二分割法」
まずは、エラーが発生して書き出しが中断する「時間」を特定することから始めます。ソフトによってエラーメッセージにタイムコードが表示されることもありますが、表示されない場合は、プロジェクトを半分に分割して書き出してみてください。例えば、全編30分の動画でエラーが出た場合、0分〜15分と15分〜30分で分けて書き出しを試みます。どちらか一方でエラーが出れば、問題はその分割された範囲内にあります。次に、そのエラーが出た範囲をさらに半分に分割するという作業を繰り返すことで、最終的に「この数秒のクリップが原因だ」という極小の箇所を特定できます。これを「二分割法」と呼びます。
特定箇所での具体的な対処法
問題の箇所を特定したら、そのクリップやエフェクトに以下の対処を試みます。
- 破損したクリップの置き換え
読み込みエラーが起きやすいクリップの場合、一度ソフトから削除し、再度同じ素材ファイルを読み込み直すか、可能であれば別の形式に変換したものを再配置します。 - 複雑なエフェクトの解除または単純化
処理負荷が高いサードパーティ製のプラグインや、複数のエフェクトを重ねがけしている箇所でエラーが起きる場合があります。一度そのエフェクトを無効(バイパス)にして書き出しを試み、成功したらエフェクトに問題があったと判断し、代替のエフェクトを使うか、エフェクトを適用する順番を変更するなどして対処します。 - ネスト化の解除
Premiere Proなどで、複数のクリップを一つにまとめて扱う「ネスト化」を行っている場合、そのネストされたシーケンス内で処理が複雑化し、エラーの引き金になることがあります。ネストを解除し、元のクリップをタイムラインに展開した状態で書き出しを試すことで、問題が解消するケースも報告されています。
これらの手法で特定の不具合箇所をピンポイントで修正することで、他の部分に影響を与えることなく、全体の書き出しを成功に導くことができます。
参照元:Adobe Community – 特定のタイムライン上のクリップによる書き出しエラーの解決方法
書き出し中にパソコンが重くなる時の注意点
動画編集の書き出し中にパソコンが「重くなる」のは、システムリソースを最大限に使用している証拠であり、ある意味で正常な状態とも言えます。しかし、あまりにも動作が重すぎて、他の作業が一切できなくなったり、マウスカーソルすらまともに動かせなくなったりする場合は、システムが危険な状態にあるか、書き出し設定に問題がある可能性があります。
パソコンが重いことの危険性
書き出し中にパソコンが過度に重い状態は、CPUやGPUが高温になり、熱暴走や強制シャットダウン、あるいは先述した書き出しエラーを引き起こすリスクを高めます。また、メモリがほぼ100%に達している場合、PCは動作を維持するためにストレージの一部を仮想メモリとして使い始めます(スワップファイル)。この動作は非常に遅く、ストレージへの負荷も高いため、書き出し速度が極端に低下し、結果的に処理時間が大幅に延長してしまいます。
処理を安定させるための工夫
書き出し中に他の作業を行いたい場合、以下の工夫で負荷を分散させ、システムを安定させることができます。
- バックグラウンド処理の調整
多くのソフトには、書き出し時のCPU使用率を制限する設定があります(例:Premiere ProのMedia Encoder設定など)。これを調整し、最大使用率を90%程度に抑えることで、残りのリソースをOSの基本動作や他の軽微な作業のために確保できます。 - タスクスケジューラの活用
Windowsの場合、タスクマネージャーから動画編集ソフトの「優先度」を「通常」や「低」に変更することで、OSや他のアプリの動作が優先されるようになり、全体のフリーズを防げます。 - 夜間書き出しの徹底
最も確実なのは、書き出し中は一切PCを操作しないことです。可能であれば、PCを操作しない夜間や休憩時間を利用して書き出しをスタートさせることで、熱やリソース競合によるエラーのリスクを最小限に抑えることができます。 - レンダリングとエンコードの分離
編集ソフトとは別の専用エンコーダーソフト(例えばPremiere ProにおけるAdobe Media Encoder)を使ってバックグラウンドで処理を行うことで、編集ソフト本体が解放され、他の作業を行いやすくなります。
これらの方法で、書き出し中のパソコンの動作を安定させ、エラーの発生を抑えることが可能です。
| 対策 | 手順 | 期待される効果 |
| 優先度を下げる | タスクマネージャーでソフトの優先度を「低」に設定 | OSや他のアプリがフリーズするのを防ぎ、PC操作の安定を保つ |
| CPU使用率を制限 | ソフト内の環境設定でエンコード時の最大CPU利用率を制限 | 熱暴走やリソースオーバーフローのリスクを減らす |
| 外部エンコーダー利用 | 編集ソフトから専用のレンダリングソフトにジョブをキューに入れる | 編集ソフトの操作性を維持しながら書き出しを並行で行える |
参照元:Intel Technology – ハイパフォーマンスCPUの熱管理と負荷分散に関する研究
ソフト別に見る書き出しエラーの対処法|Premiere Pro・DaVinci・CapCut対応

動画編集ソフトは多種多様であり、それぞれのソフトが独自のレンダリングエンジンやエンコード機構を採用しています。そのため、書き出しエラーが発生した場合の具体的な対処法も、ソフトによって最適解が異なります。ここでは、プロアマ問わず利用者が多い主要な編集ソフトについて、実際に現場でよく使われる書き出しエラーの解決テクニックをご紹介します。原因が特定できない場合でも、これらの設定を見直すだけで解決することが非常に多いので、ぜひ参考にしてください。
Premiere Proで書き出しが止まる時の設定チェック項目
Adobe Premiere Proは業界標準のソフトですが、多機能ゆえに設定項目も多く、書き出しエラーも頻繁に報告されます。書き出しが途中で止まる、あるいはフリーズする場合、まずは以下のチェックリストに基づいて設定を見直してください。
解決策1: ハードウェアエンコーディングの確認と切り替え
Premiere Proは、書き出し時に「ハードウェアエンコーディング」(GPU)と「ソフトウェアエンコーディング」(CPU)を選択できます。デフォルトでは高速なハードウェアエンコーディングが選択されますが、古いGPUやドライバの不安定さが原因でエラーが出やすい場合があります。
書き出し設定画面の「エンコード設定」セクションで、「パフォーマンス」の項目が「ハードウェアエンコーディング」になっている場合、これを一時的に「ソフトウェアエンコーディング」に切り替えて、再度書き出しを試みてください。これにより書き出し速度は低下しますが、GPUの互換性問題や熱問題を回避でき、エラーが解消することが多いです。逆に、ソフトウェアエンコーディングでフリーズする場合は、ハードウェアエンコーディングに戻すことで負荷分散が成功するケースもあります。
解決策2: VBR 2パスエンコードの解除
書き出し設定で「VBR, 2パス」(可変ビットレート、2回処理)を選択している場合、これは最高品質を目指すための非常に負荷の高い処理です。この2パス目の処理中にエラーが起きやすくなるため、書き出し品質を維持しつつ安定性を高めるには、「CBR」(固定ビットレート)に変更するか、「VBR, 1パス」に切り替えてみてください。ほとんどのプラットフォーム(YouTubeなど)では、VBR 1パスでも十分な品質が確保できます。
解決策3: レンダラーの変更とメディアキャッシュのクリア
書き出し以前の問題として、プロジェクト内のレンダラー設定が「CUDA」や「OpenCL」になっている場合、特定のGPU環境で不安定になることがあります。メニューから「ファイル」>「プロジェクト設定」>「一般」を開き、「ビデオレンダリングおよび再生」の項目を「Mercury Playback Engineソフトウェア処理」に変更してみてください。
これによりGPUへの依存を完全に切り、CPUのみで処理することで安定性が向上します。また、先述の通り、「編集」>「環境設定」>「メディアキャッシュ」からキャッシュファイルを完全にクリアしてから再起動することも、安定化には不可欠な作業です。
| Premiere Pro 書き出しエラー対処法 | 設定箇所 | 解決のポイント |
| エンコード方式の切り替え | 書き出し設定 > ビデオ > エンコード設定 > パフォーマンス | ハードウェア/ソフトウェアを切り替えてGPUの問題を回避 |
| VBR 2パスの停止 | 書き出し設定 > ビデオ > ビットレート設定 | 負荷の高い2パス処理を避け、1パスまたはCBRで安定させる |
| レンダラーの変更 | ファイル > プロジェクト設定 > 一般 > ビデオレンダリング | GPU依存を解除し、CPU処理に切り替えて安定化を図る |
| メディアキャッシュクリア | 編集 > 環境設定 > メディアキャッシュ | 古い・破損したキャッシュデータが書き出しを妨害するのを防ぐ |
参照元:Adobe Premiere Pro CC 公式マニュアル – エンコードとレンダリングのトラブルシューティング
DaVinci Resolveの書き出しエラーを防ぐレンダー設定方法
プロの現場でも利用者が急増しているBlackmagic Design社のDaVinci Resolveは、高性能なカラーグレーディング機能を持つ反面、その高度な処理ゆえに書き出し(レンダー)エラーも起こりやすいソフトです。Resolveでエラーが発生した場合、レンダー設定の調整が解決の鍵となります。
解決策1: レンダリングの「シングルクリップ」を試す
DaVinci Resolveは、タイムライン全体を一本のファイルとしてレンダーする「シングルクリップ」と、個々のクリップごとに書き出す「個別クリップ」のオプションがあります。全体書き出しでエラーが出る場合、まずはタイムライン全体を選択した状態で、設定内の「ファイル」セクションにある「シングルクリップ」を選択して書き出しを試みてください。
さらに、それでもエラーが出る場合は、タイムラインを数分単位に分割し、「個別クリップ」として書き出し、後から結合する手法が非常に有効です。これにより、エラーの発生箇所を特定しながら、他の正常な部分だけを先に完成させることができます。
解決策2: エンコーダーの選択(特にWindows環境)
DaVinci Resolveの「レンダー設定」内には、Windows環境であれば「NVIDIA」「AMD」「Intel」などのエンコーダーを選択できる項目があります。Resolveは高性能な処理が多いため、使用しているGPU専用のエンコーダー(NVIDIAの場合はNVENC)を選択することで、処理速度は上がりますが、エラーも出やすくなります。
安定性を最優先する場合、エンコーダーを「システム」(CPUベースのソフトウェアエンコーディング)に切り替えるか、または「DaVinci Resolve」内蔵のエンコーダー(H.264/H.265のプロジェクト設定に基づく)を選択することで、安定した書き出しが行えることがあります。
解決策3: ネットワーク最適化の無効化
Resolveの高度な機能として「ネットワークの最適化(Network Optimization)」がありますが、これが不安定なネットワーク環境や特定のシステムで書き出しエラーを引き起こす場合があります。この設定は「DaVinci Resolve」>「環境設定」>「システム」>「一般」セクション内で見つけることができます。通常はオフで問題ありませんが、もしオンになっている場合はオフに戻すことで、書き出し中の通信エラーを回避し、安定した処理を確保できます。
| DaVinci Resolve 書き出しエラー対処法 | 設定箇所 | 解決のポイント |
| 個別レンダーの活用 | レンダー設定 > ファイル > 個別クリップ/シングルクリップ | タイムラインを細かく分割してエラー箇所を特定し、処理負荷を分散する |
| エンコーダーの変更 | レンダー設定 > ビデオ > エンコーダー | GPU専用エンコーダー(NVENCなど)からCPUベースまたはResolve内蔵エンコーダーに切り替える |
| レンダーキャッシュの削除 | DaVinci Resolve > 環境設定 > システム > メディアストレージ | 破損したレンダーキャッシュが書き出しを妨げている場合に有効 |
| 速度制御の有効化 | レンダー設定 > 詳細設定 > ネットワークの最適化 | 不安定なネットワーク環境での通信エラーによる中断を防ぐため、この設定を無効にする |
参照元:Blackmagic Design DaVinci Resolve トレーニングマニュアル – レンダリングと出力
CapCutで「書き出しに失敗しました」と出た時の解決手順
CapCutはTikTokなどのショート動画プラットフォームで人気が高く、無料でありながら高性能な編集機能を持つソフトです。特にPC版のCapCutは操作が直感的ですが、「書き出しに失敗しました」というシンプルなエラーメッセージに悩まされるユーザーも少なくありません。CapCutのエラーの多くは、非常にシンプルで初歩的な原因が背景にあります。
解決策1: プロキシ機能の解除と再起動
CapCutは、処理を軽くするために「プロキシ」という低解像度の代理ファイルを自動生成することがありますが、このプロキシと最終書き出しの解像度設定が競合してエラーとなる場合があります。エラーが発生したら、一度CapCutを完全に終了し、再度起動し直すことでプロキシ設定がリフレッシュされることがあります。また、プロジェクト内の「パフォーマンス」設定などから、プロキシ機能自体を一時的にオフにして書き出しを試してみるのも有効です。
解決策2: ファイル名と保存先のシンプルな変更
CapCutは、保存先のパスやファイル名に日本語(全角文字)や特殊文字が含まれていると、書き出しプロセスが文字コードの問題で中断してしまうことがあります。これは、海外製のソフトによく見られる傾向です。解決策として、書き出し先のフォルダ名を「Desktop」や「Export」といった半角英数字のみの名前に変更し、さらに書き出すファイル名も「video1」のようにシンプルで短い英数字の名前に変更してから書き出しを試みてください。
解決策3: 解像度の引き下げとビットレートの調整
4Kや高フレームレート(60fpsなど)の動画を編集していてエラーが出る場合、PCのスペック不足が原因である可能性が非常に高いです。書き出し設定で、解像度を「1080p」(フルHD)に、フレームレートを「30fps」に引き下げてみてください。これにより処理負荷が劇的に軽減され、書き出しが成功する可能性が高まります。成功した場合は、その後少しずつ解像度やフレームレートを上げて、どこまでがPCの限界なのかを確認するのが良いでしょう。また、ビットレートを「推奨」ではなく、少し低めの「高」や「標準」などに調整することも、エンコード負荷軽減に繋がります。
参照元:CapCut 公式コミュニティ – PC版エラー報告と解決策フォーラム
AviUtlで出る「出力エラー」の原因と改善方法
国産の無料動画編集ソフトであるAviUtlは、非常に軽快でカスタマイズ性が高いことから長年愛用されていますが、その構造上、書き出し処理は「拡張出力プラグイン」に依存しています。このため、「出力エラー」が発生した場合、本体ではなくプラグイン側に問題があるケースがほとんどです。
解決策1: 拡張出力プラグインの再確認と更新
AviUtlで一般的なのは「L-SMASH Works」や「x264guiEx」などの拡張出力プラグインです。これらのプラグインのバージョンが古い、あるいは設定ファイルが破損していると、最新のOSやAviUtl本体とうまく連携できずにエラーを吐き出します。まずは、使用している出力プラグインの公式サイトへ行き、最新版が公開されていないかを確認し、新しいものに差し替えることを推奨します。特に、プラグインの「導入時の手順」が複雑なため、設定ファイルの配置ミスがないかも再確認してください。
解決策2: エンコーダーの設定リセット
x264guiExなどのエンコーダー設定画面で、詳細なカスタマイズ(ビットレート、プロファイル、プリセットなど)を深く行っている場合、設定値が不正となり出力エラーの原因になることがあります。エラーが出た場合、一度設定を「デフォルト」に戻し、最もシンプルな「標準」や「速い」といったプリセットを選択して書き出しを試みてください。この際、AviUtlのメインウィンドウの「環境設定」>「拡張編集の設定」にある最大画像サイズの項目が、編集している動画の解像度に対して小さすぎないかも確認しておくと良いでしょう。
解決策3: 参照ファイルとフィルタ効果のチェック
AviUtlは、拡張編集のタイムライン上で、読み込み元の素材ファイルへのパスが切れたり、外部のDLLファイルに依存するカスタムフィルタ効果を使っている場合に、書き出しで失敗しやすい傾向があります。エラーが出た時間付近のクリップを一時的に非表示(目のアイコンをオフ)にして書き出しを試み、どのフィルタやクリップが原因かを特定してください。原因がカスタムフィルタにある場合、そのフィルタを削除するか、設定を無効にして、AviUtlの標準フィルタに置き換える必要があります。
| AviUtl 出力エラー対処法 | 問題の所在 | 解決のポイント |
| プラグインの更新 | 拡張出力プラグイン(x264guiExなど)のバージョン古さ | 公式サイトから最新版をダウンロードし、正しく導入し直す |
| エンコーダー設定 | カスタム設定が不正、または高負荷すぎる設定 | 設定を「デフォルト」に戻し、プリセットの「標準」で試す |
| フィルタ効果 | 外部DLLに依存するカスタムフィルタの不安定さ | エラー箇所のフィルタを一時的に無効化し、原因を特定・削除する |
| ファイルパス | 読み込み元の素材ファイルのパス切れやファイル名問題 | 素材ファイルを再読み込みし、パスが日本語でないか確認する |
参照元:AviUtl 関連プラグイン開発者ブログ – x264guiEx/L-SMASH Works 最新版情報とトラブルシューティング
CanvaやClipchampなどブラウザ編集での書き出しエラー対策
最近人気が高まっているCanvaやMicrosoft Clipchampなど、ウェブブラウザ上で動作するクラウドベースの動画編集ツールも、書き出しエラーが発生することがあります。これらのブラウザ編集の場合、エラーの原因はローカルPCのスペックだけでなく、「ネットワーク環境」と「ブラウザ設定」に大きく依存します。
解決策1: 安定したネットワーク環境の確保
クラウド編集は、編集データやレンダリング処理の一部、またはすべてをサーバー側で行うため、書き出し(ファイルのダウンロード)中にインターネット接続が切断されたり、通信速度が極端に低下したりすると、データ転送が中断されエラーとなります。特に、Wi-Fi環境が不安定な場所で作業している場合や、モバイルルーターなどの帯域が狭い接続を使っている場合は、有線LAN接続に切り替えるか、より安定したWi-Fiルーターの近くで作業することで、書き出しの安定性が劇的に向上します。
解決策2: ブラウザのキャッシュとCookieのクリア
ブラウザのキャッシュやCookieが大量に溜まっていると、ウェブアプリケーションである動画編集ソフトの動作を妨げることがあります。書き出しエラーが出たら、まず使用しているブラウザ(Chrome、Edgeなど)の設定メニューから、一時的なキャッシュとCookieをクリアしてから、編集ソフトのページを再読み込みしてください。ただし、この操作を行うと他のウェブサイトで保存していたログイン情報なども消えるため、注意が必要です。
解決策3: ブラウザのGPUアクセラレーションの確認
ほとんどのブラウザは、動画処理を高速化するためにGPUアクセラレーションを使用していますが、ブラウザ側の設定でこれが無効になっていると、CPUだけで処理することになり、非常に遅く、最終的にタイムアウトエラーを引き起こします。ブラウザの設定(Chromeの場合は「システム」セクションなど)を確認し、「ハードウェアアクセラレーションが使用可能な場合は使用する」といった項目が有効になっているかを確認してください。また、ブラウザ自体を最新バージョンに更新することも、安定性向上のためには不可欠です。
| ブラウザ編集 書き出しエラー対処法 | 問題の所在 | 解決のポイント |
| ネットワークの不安定さ | ダウンロード途中の接続切れ | 有線LANに切り替えるか、高速で安定したWi-Fiに接続する |
| ブラウザの過負荷 | 大量のキャッシュやCookieの蓄積 | ブラウザの設定からキャッシュとCookieを削除する |
| ハードウェアアクセラレーション | ブラウザの設定でGPU利用が無効化されている | ブラウザの設定でハードウェアアクセラレーションを有効にする |
| ローカルPCのメモリ不足 | ブラウザがメモリを大量に消費している | ブラウザ以外のアプリケーションをすべて終了させる |
参照元:Microsoft Clipchamp 公式ブログ – ブラウザ版編集の最適な動作環境
ソフトがフリーズする時の一時保存・自動保存の活用法
書き出し中だけでなく、編集中にソフトがフリーズしたりクラッシュしたりするリスクは常につきまといます。特に書き出しエラーは、編集作業の終盤に起こるため、それまでの苦労が一瞬で水泡に帰す恐れがあります。このリスクを最小限に抑えるためには、動画編集ソフトに搭載されている「一時保存」や「自動保存」の機能を最大限に活用し、データを常に守ることが重要です。
自動保存機能の頻度を短く設定する
ほとんどのプロ向け動画編集ソフト(Premiere Pro、DaVinci Resolveなど)は、数分間隔で自動的にプロジェクトのバックアップを保存する機能を持っています。この自動保存の間隔が「30分」などと長く設定されている場合、クラッシュ時に最大で30分間の作業が失われてしまいます。
この間隔を「5分ごと」や「10分ごと」に短く設定することで、万が一のクラッシュからの復旧時に失われる作業量を最小限に抑えることができます。ただし、自動保存の頻度を短くしすぎると、編集中に頻繁に保存処理が挟まるため、動作が一時的に重くなることがあります。このバランスを、ご自身のPCスペックと相談しながら決めることが大切です。
予期せぬトラブルのための「手動での別名保存」
自動保存はあくまで保険ですが、書き出し直前や大きな編集変更を加える前など、重要な区切りを迎えた際には、必ず「別名でプロジェクトを保存」することを習慣づけてください。例えば、「Project_v1.0_FinalCut」というファイル名で保存した後、次の作業に移る前に「Project_v1.1_BeforeExportTest」といったように、バージョン管理を意識した別名保存を行うのです。
これにより、もし書き出しエラーが、最新のプロジェクトファイル(v1.1)内部の破損に起因していたとしても、一つ前の安定したファイル(v1.0)に戻って書き出しを再試行できるという大きなメリットがあります。これはプロの現場では必須の安全対策です。
参照元:Adobe Blog – プロジェクトファイルの健全性とバックアップ戦略
無料ソフトの書き出し制限や保存形式にも注意
無料版の動画編集ソフトや一部のブラウザベースのツールには、ビジネスモデル上の理由から、有料版へのアップグレードを促すための「書き出し制限」が設けられていることがあります。これらの制限を知らずにエラーだと思って時間を無駄にする前に、まずは利用規約やヘルプページを確認しましょう。
無料版にありがちな制限事項
| 制限事項 | 具体的な内容 | 影響 |
| 解像度制限 | 4K出力は不可、最大1080p(フルHD)まで | 4Kで書き出そうとするとエラーになる、または自動的に解像度が下げられる |
| 時間制限 | 一回の書き出しは最大10分、または30分まで | 長時間の動画を書き出そうとするとエラーまたは中断される |
| 形式制限 | 高度な形式(ProResなど)は選択不可、H.264 MP4のみ | MOVやWebMなど、特定の形式で書き出せない |
| ウォーターマーク | 完成した動画にソフトのロゴが表示される | ロゴなしで書き出すには有料版の購入が必要 |
適切な保存形式(コンテナ)の選択
書き出し形式(コンテナ)の選択も、書き出しエラーに大きく影響します。一般的にウェブ公開向けには「MP4」(コーデックはH.264またはH.265)が最も広く使われており、互換性も高いです。しかし、もし書き出しが頻繁に失敗する場合は、一時的に「MOV」や「AVI」など別のコンテナ形式で書き出しを試みてください。
コンテナ形式を変えるだけで、エンコーダーが内部的に処理するデータ構造が変わり、エラーが解消することがあります。ただし、MP4以外の形式はファイルサイズが大きくなったり、再生互換性が低くなったりする可能性があるため、最終的にはMP4に戻して書き出すのが理想的です。
参照元:Google Support – YouTube推奨の動画形式とコーデック
書き出しエラーを防ぐためのパソコン環境と設定の見直し方
書き出しエラーの最も確実な解決策は、エラーが発生しにくい安定した作業環境を構築することに尽きます。動画編集の現場では、PCのスペック、ストレージの構成、そしてソフトの設定が、完成までのスピードと安定性に直結します。ここでは、プロの視点から、エラーを未然に防ぐためにあなたのパソコン環境と設定をどのように見直すべきか、具体的な方法論と目安をお伝えします。
【以下で分かること】
- 動画編集に最適化されたメモリ容量とストレージ構成の適切な目安
- 外付けSSDやHDDを最大限に活用し、書き出しの安定性を高める設定
- GPUアクセラレーションの正しい使い方と、熱対策の重要性
- 書き出しの失敗を防ぐためのバックグラウンド処理とファイル形式の選び方
書き出しに必要なメモリ・ストレージ容量の目安
動画編集を安定して行うためには、ソフトの公式推奨スペックよりも、ワンランク上のメモリとストレージ容量を用意することが、結果的に時間とストレスの節約に繋がります。特に、書き出しエラーの主な原因となるリソース不足を解消するために、以下の目安を参考にしてください。
メモリ(RAM)容量の重要性
メモリは、編集ソフトが処理中のデータや、タイムライン上の複数のクリップ、エフェクト、そしてOS自体が動作するために一時的に情報を置いておく場所です。これが不足すると、PCはストレージの一部を仮想メモリとして使うようになり、極端に動作が遅くなるだけでなく、書き出し処理の過程でデータが滞留し、エラーの原因となります。
| 編集する動画の解像度 | 最低限必要なメモリ容量 | 推奨メモリ容量 |
| フルHD (1080p) | 16GB | 32GB |
| 4K (2160p) | 32GB | 64GB |
| 6K以上 / RAW編集 | 64GB | 128GB以上 |
特に4K動画の編集を行う場合、エフェクトやカラーグレーディングを適用するだけで32GBはすぐに使い切ってしまうため、64GBを搭載しておけば、書き出し中の安定性が格段に向上します。メモリは増設が比較的容易な部品ですので、もし現在16GBであれば、32GBへの増設を強く推奨します。
ストレージ(SSD/HDD)の構成
ストレージは、書き出しエラーだけでなく、編集作業全体の快適さにも直結します。理想的な動画編集環境では、ストレージを機能に応じて「3つのドライブ」に分けるのが基本です。
- システム&アプリケーションドライブ(Cドライブ)
OSと編集ソフトをインストールする場所。高速なNVMe SSDが必須です。 - メディアキャッシュ&作業ドライブ
編集中の素材ファイルや、ソフトの一時ファイル(キャッシュ)を置く場所。ここも高速なSSD(内蔵または外付けThunderbolt/USB 3.1接続のSSD)を使うことで、書き出し時のボトルネックを防げます。 - 書き出し先&アーカイブドライブ
完成した動画ファイルや、過去のプロジェクトを保存する場所。大容量のHDDや外付けSSDが適しています。
書き出しエラーを防ぐために最も重要なのは「2. メディアキャッシュ&作業ドライブ」です。ソフトの設定で、メディアキャッシュの保存先をシステムドライブではない、別の高速なSSDに指定し直すだけで、書き出し時の処理速度と安定性が向上します。
参照元:Crucial – 動画編集のためのメモリとストレージの選び方に関する専門記事
外付けSSD・HDDを使う時の注意点とおすすめ設定
内蔵ストレージの容量不足を補うために外付けSSDやHDDを利用するのは一般的な手法ですが、その使い方を間違えると、かえって書き出しエラーの原因になることがあります。外付けドライブを最大限に活用し、安定性を確保するための注意点と設定方法を理解しておきましょう。
接続規格の確認と安定化
外付けドライブを使用する際、最も重要なのは接続の安定性です。USB 2.0や古いUSB 3.0接続では、特に4K以上の大容量データの転送速度が不足し、書き出し処理中にデータ転送が追いつかずにエラーが発生する原因となります。
推奨される接続規格は以下の通りです。
- 最速・推奨
Thunderbolt 3/4 または USB 3.1 Gen 2 / USB 3.2 Gen 2×2(10Gbps以上の転送速度を持つもの) - 最低限
USB 3.0 Gen 1(5Gbps)
また、ケーブルが劣化していたり、ハブを経由して接続していたりすると、接続が不安定になりがちです。書き出しを行う際は、可能であれば外付けドライブをPCのUSBポートに「直結」し、ケーブルもメーカー純正または高品質なものを使用してください。
ドライブのファイルシステムの再確認
前述の通り、外付けドライブがFAT32形式になっていないか確認することは非常に重要です。特にWindowsとMacの両方で使いたい場合は「exFAT」形式でフォーマットすることが推奨されますが、exFATはNTFSやAPFSに比べてわずかに安定性が劣る場合があるため、もし片方のOSでのみ使用するなら、WindowsはNTFS、MacはAPFS(またはHFS+)でフォーマットするのが最も安定します。フォーマットはドライブのデータを全て消去するため、必ずバックアップを取ってから行ってください。
外付けドライブをキャッシュ保存先に指定
書き出しエラーを防ぐためのベストな設定の一つは、外付けの高速SSDを「メディアキャッシュ」と「書き出し先」の両方に指定することです。これにより、書き出し中にシステムドライブへの負荷を大幅に軽減し、ボトルネックを解消できます。
参照元:Samsung Technology – 外付けSSDの最適化と接続規格の比較
GPUアクセラレーションを有効にするメリットと注意点
GPUアクセラレーションは、動画編集ソフトがGPUの専用ハードウェアを利用して、レンダリングやエンコードを高速化する技術であり、書き出し時間を大幅に短縮するメリットがあります。しかし、この機能は使い方を誤ると、エラーの直接的な原因にもなりえます。
GPUアクセラレーションがエラーを引き起こす理由
GPUアクセラレーション(Premiere ProではCUDA/OpenCL、DaVinci ResolveではOpenCL/Metalなど)を使用すると、CPUだけでは処理しきれない膨大な計算をGPUに肩代わりさせることができます。しかし、この技術は、以下のような問題がある場合にエラーを引き起こします。
- ドライバの不整合
最新のソフトが、古いGPUドライバの不特定なバグを踏んでしまい、処理が中断する。 - GPUのオーバーヒート
高負荷処理でGPU温度が安全限界を超え、保護機能が働き強制的に処理を停止させる。 - 特定の不具合
使用しているエフェクトやトランジションが、GPUエンコーダーと相性が悪く、処理が完遂できない。
安定させるための設定と手順
GPUアクセラレーションを安定して利用するためには、以下の対策を徹底してください。
- ドライバの頻繁な更新
NVIDIA(GeForce)やAMD(Radeon)の公式サイトから、常に最新の「Studio Driver」(クリエイター向けドライバ)を使用してください。これはゲーミングドライバよりも安定性と互換性を重視して開発されています。 - ソフト内でのレンダラーの切り替え
エラーが発生した場合、すぐにアクセラレーション設定(レンダラー)をGPUから「ソフトウェア処理」(CPUベース)に切り替えて、GPUの問題かどうかを切り分けます。ソフトウェア処理で成功すれば、原因はGPU側にあります。 - 冷却の強化
ノートPCであれば冷却台を使い、デスクトップPCであれば、PC内部にホコリが溜まっていないかを確認し、エアダスターなどで清掃を行い、排熱効率を高めてください。熱による強制停止を防ぐことが、安定書き出しの鍵となります。
参照元:NVIDIA Studio – クリエイター向けドライバの解説と推奨事項
ウイルス対策ソフトやバックグラウンドアプリの影響
意外に知られていない書き出しエラーの原因として、バックグラウンドで動作している他のアプリケーションや、特にウイルス対策ソフト(セキュリティソフト)の影響が挙げられます。
ウイルス対策ソフトのリアルタイムスキャン
ウイルス対策ソフトは、PC上でファイルが作成されたり変更されたりするたびに、そのファイルを自動的にスキャンする「リアルタイムスキャン」機能を持っています。動画編集の書き出し中、数GB〜数十GBの動画ファイルが一気に作成されていくため、ウイルス対策ソフトはその巨大なファイルを監視し、スキャンしようとします。このスキャン処理が、書き出しソフトのファイル書き込み処理と競合したり、CPU/ストレージリソースを奪ったりすることで、書き出しが不安定になりエラーとなることがあります。
解決策:一時的な無効化と除外設定
書き出しを行う直前は、以下の手順でウイルス対策ソフトの影響を最小限に抑えてください。
- 書き出し中のリアルタイムスキャンの無効化
ウイルス対策ソフトの設定画面を開き、書き出し処理を行っている間だけリアルタイムスキャンを一時的に無効にします。書き出しが完了したら、すぐに元に戻すことを忘れないでください。 - 編集ソフトと書き出しフォルダの除外設定
ウイルス対策ソフトの設定で、動画編集ソフト(Premiere Pro.exeなど)と、書き出し先のフォルダを「スキャン対象から除外」する設定を追加します。これにより、ソフトの実行ファイルや出力中のファイルが監視されなくなり、リソース競合を防ぐことができます。
また、クラウドストレージの同期ソフト(Google Drive, Dropbox, OneDriveなど)も、書き出しが完了した瞬間にその巨大なファイルを同期しようとして、ネットワークリソースとストレージリソースを奪います。書き出し中は、これらの同期ソフトも一時停止しておくことが賢明です。
参照元:Norton Support – 大容量ファイルを扱う際のセキュリティソフトの設定
書き出し形式(MP4/MOVなど)を変えると成功するケース
書き出し形式(コーデックやコンテナ)を別のものに変更するだけで、エラーが解消することがあります。これは、PC環境やソフトの設定が、特定のエンコード処理とうまくかみ合っていない場合に有効な回避策です。
H.264からH.265への切り替え
多くのソフトで標準となっているH.264(AVC)は広く互換性がありますが、4K動画など高解像度になると処理負荷が高くなります。ここで、より新しい圧縮技術であるH.265(HEVC)に切り替えてみてください。
H.265は圧縮率が高く、同じ画質でもファイルサイズを小さくできるため、一見負荷が高そうに思えますが、対応するハードウェアエンコーダー(新しいGPU)を使っている場合、H.264よりもスムーズに処理が完了し、エラーが起きにくい場合があります。ただし、古いPCや再生デバイスではH.265の互換性が低いことがあるため、注意が必要です。
中間コーデックを利用した二段階書き出し
最も確実なのは、完成ファイルの形式ではなく、まずは高品質な「中間コーデック」で一度書き出しを行う「二段階書き出し」です。
- 中間コーデックの例
Apple ProRes、Avid DNxHR/DNxHD、あるいはCineformなど。
これらの形式は、ほとんど圧縮をかけないため、書き出し時の負荷が非常に低く、エラーなく完了しやすいのが特徴です。中間ファイルが完成したら、次にそのファイルを読み込み、目的の形式(H.264 MP4など)で再エンコード(書き出し)します。
手間はかかりますが、複雑な編集処理(エフェクト、カラーなど)を最初の書き出しで完全に処理してしまうため、二度目の書き出しは非常にシンプルになり、エラーの発生を劇的に減らすことができます。特に長時間動画や複雑なプロジェクトで最終書き出しがうまくいかない時に試すべき、プロの技術です。
| 形式変更による安定化の選択肢 | メリット | デメリット/注意点 |
| H.264 → H.265 (HEVC) | ファイルサイズが小さくなり、新しいGPUでは処理が安定しやすい | 古いPCやデバイスでは互換性がない場合がある |
| 最終形式 → 中間コーデック (ProResなど) | エンコード負荷が最も低く、エラー発生率が最小限になる | ファイルサイズが非常に大きくなり、二度の書き出しが必要になる |
| MP4 → MOV | エンコーダーのコンテナ構造の違いでエラーを回避できる場合がある | ファイルサイズや互換性に大きな違いはないが、念のための回避策 |
参照元:TechTarget – 動画コーデックの基礎知識とエンコーディングの課題
一度に複数の動画を書き出す時に重くならない工夫
YouTubeチャンネルなどで複数の動画を同時にアップロードするために、書き出しをまとめて行いたいと考える方も多いでしょう。しかし、一つのPCで複数の書き出しジョブを同時に実行すると、PCの負荷は瞬時に限界を超え、処理速度の低下や、最悪の場合は全てのジョブがエラーで失敗する原因となります。
解決策:書き出しキューの活用と連続処理
一度に複数の動画を書き出す最も安全で効率的な方法は、「同時処理」ではなく「連続処理」を行うことです。
- 書き出しキューに追加
動画編集ソフトの書き出し機能で、「今すぐ書き出し」ではなく「キューに追加」を選択します(Premiere ProであればAdobe Media Encoder、DaVinci Resolveであればレンダーキュー)。 - 連続で実行
キューに追加されたジョブは、一つ目が完了してから二つ目が自動的に開始されるように設定されています。これにより、PCのリソースは常に一つの書き出しジョブに集中されるため、負荷が分散しすぎることなく、安定した処理が可能です。
この方法であれば、PCは夜間に自動で全ての書き出しを順番に完了させることができ、あなたは安心してPCから離れることができます。このキュー機能こそが、プロが複数の動画を処理する際の必須ツールです。
負荷分散のためのビットレート調整
もし、どうしても複数の動画を同時に処理したい場合は(例えば、短い動画が2本など)、各動画の書き出し設定でビットレートを大きく引き下げてみてください。ビットレートを下げることでエンコード負荷が軽減され、CPU/GPUにわずかな余裕が生まれます。しかし、この方法はPCのスペックに大きく依存し、エラーのリスクは高まるため、基本的には推奨しません。
参照元:Adobe Media Encoder 公式ドキュメント – バッチエンコードとキュー管理
長時間動画を書き出す前にやっておくべき準備【まとめ】
長時間にわたる動画(30分以上、特に1時間超)の書き出しは、PCにとっての耐久テストのようなものです。途中でエラーが起きると被害が大きいだけに、書き出しを始める前に以下の最終チェックリストを実行し、万全の態勢を整えてから臨んでください。
- プロジェクトのバックアップ
書き出し直前の安定した状態のプロジェクトファイルを、必ず別名で保存しておきましょう。 - システムとドライバの最新化
OS、動画編集ソフト、グラフィックドライバ(NVIDIA/AMD)のすべてが最新バージョンであることを確認してください。 - 書き出し先の容量確認
最終ファイルサイズの3倍以上の空き容量が、書き出し先のドライブにあることを確認しましょう。 - メディアキャッシュのクリア
編集ソフトの設定から、古いキャッシュファイルを全て削除し、ストレージを整理しておきます。 - 他のアプリケーションの完全終了
ウェブブラウザ、チャットアプリ、クラウド同期ソフトなど、バックグラウンドで動く全てのアプリケーションを終了させ、リソースを解放します。 - GPU温度のチェック
書き出し前にフリーソフトなどでGPU温度を確認し、可能であればPCの冷却を強化(冷却台の使用など)しておきましょう。 - 最も安定したエンコード形式の選択
初めての書き出しであれば、カスタム設定を避け、H.264などの標準的なプリセット(VBR 1パスなど)を選択してください。 - 二分割法の準備
万が一エラーが発生した場合に備え、タイムラインを半分に分割する目印(マーカー)をあらかじめ打っておくと、エラー箇所の特定が迅速に行えます。 - 電源設定の見直し
PCがスリープモードに入らないよう、OSの電源設定を「スリープなし」に設定し、ノートPCの場合は必ず電源アダプターに接続しておきましょう。 - 書き出しのキュー設定
複数の動画を連続で書き出す場合は、必ずキュー機能を利用し、PCへの負荷を順番に分散させるように設定しましょう。
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